ケッペンの気候区分とは、ケッペンというドイツの学者がつくった世界の気候区分です。
この記事では、ケッペンの気候区分では、どのような判断基準によって気候が区分けされているのかを見ていきます。
どんな気候なのかは、気温や降水量によって決まりますよね。気温や降水量は、どんな樹木が生育できるかといったことと関係してきます。ケッペンは、樹林の有無や植生の分布に着目して、気候区分をつくりました。
A~Eの記号の意味
ケッペンの気候区分は、A、B、C、D、Eの記号がつけられています。
これらの記号に意味はあるのでしょうか?
実は、とくに深い意味はありません。
たんに年中高温の赤道から、低緯度方面に順番に記号がふられただけです。
- 低緯度帯から高緯度帯へとA→B→C→D→Eと記号がつけられました。
- A → 熱帯
- B → 乾燥帯
- C → 温帯
- D → 亜寒帯
- E → 寒帯
です。
樹林に着目して気候区を分けた
どのように区分けしていったのかを見てみましょう。
ケッペンは、まず樹木の有無に着目をした、と上に書きました。
- 樹林があるのは、熱帯A、温帯C、亜寒帯D
- 樹林が無いのは、乾燥帯B、寒帯E
です。
樹林が無い理由は、乾燥帯Bは雨が少なくて乾燥しているから生育できない、寒帯Eは、寒くて生育できないからです。
樹林があるかどうかが、気候要素である降水量と気温とに関係しているわけですね。
それから、熱帯A、乾燥帯B、温帯C、亜寒帯D、寒帯Eのなかにも、いくつかの種類があります。降水量や気温によって分類しています。
熱帯Aの後ろにfや、m、wなどの記号がついて、
- Af
- Am
- Aw
乾燥帯Bの後ろにS、Wがついて、
- BS
- BW
温帯Cの後ろにsや、w、faなどの記号がついて、
- Cs
- Cw
- Cfa
- Cfb
亜寒帯Dの後ろにf、wがついて、
- Df
- Dw
寒帯Eの後ろにT、Fがついて
- ET
- EF
区分けをするときには、まず乾燥しているのかどうか、を判断するところから始まります。
乾燥帯かどうかの判断基準
乾燥しているかどうかを判断することは、つまり乾燥帯Bであるのか、それ以外なのかを判断するということと同じです。
この地域は乾燥帯Bだな、こちらの地域はそれ以外(温帯Cや亜寒帯Dなど)だな、と区分けをするには、なんらかの基準が必要ですよね。
その基準が乾燥限界の降水量です。
乾燥限界とは、湿潤気候と乾燥気候の境目のこと。
とある地域の降水量が、乾燥限界の降水量よりも少ないのであれば、その地域は乾燥帯と判断をくだすことができます。乾燥限界の降水量以上であれば、乾燥はしていなくて、温帯Cとか寒帯Dになるだろうと判断できます。
乾燥限界の次の式で計算できます。
まず、その地域が
- 夏季に乾燥するs型
- 冬に乾燥するw型
- 年中湿潤するf型
なのかを判断します。どのタイプなのかによって、乾燥限界の計算方法が変わってきます。
s型は、
(夏の最少雨月降水量 × 3) ≦ 冬の最多雨月降水量
に当てはまるもの。
w型は、
(冬の最少雨月降水量 × 10) ≦ 夏の最多雨月降水量
に当てはまるもの。
年中湿潤f型は、
上の2つに当てはまらないもの
です。
年間平均温度をt、乾燥限界をrとすると
- 夏季に乾燥するs型 r=20t
- 冬に乾燥するw型 r=20(t+14)
- 年中湿潤するf型 r=20(t+7)
となります。
そして、とある地域の降水量が、
- 乾燥限界r以上であれば、湿潤気候
- 乾燥限界r未満であれば、乾燥気候
となります。
さらに乾燥気候の中では、年間降水量が
- r/2以上r未満だと、ステップ気候BS
- r/2未満だと砂漠気候BW
となります。
この式をみると、年間平均気温tが高いほど乾燥限界の値は大きくなります。気温が高いほうが水分が蒸発しますから、そのぶん湿潤と言えるためには降水量が必要なわけです。
また、冬に乾燥するw型では、r=20(t+14)となっていて、乾燥限界rが大きな値になりますが、夏季に乾燥s型では、r=20tとなっていて、乾燥限界rが小さな値になりますね。
この理由は、夏は暑くて水分が蒸発しやすいため、湿潤と言うための基準を厳しくしているからです。
冬に乾燥するw型は、夏に多くの雨が降るのですが、夏は暑いので雨が降ってもすぐに蒸発してしまいます。だから湿潤と言うためには、より多くの降水量が必要となります。それで、20(t+14)で、乾燥限界rが大きくなるような計算式になっています。
どの地域なのかによって、乾燥限界rの値は変わってきますが、目安としては500mm程度です。
簡単に覚えるのであれば、乾燥限界は500mm程度と考えればよいでしょう。
年間降水量が
- 250以上~500mm未満だと、ステップ気候BS
- 250mm未満だと砂漠気候BW
です。
熱帯A、温帯C、亜寒帯D、寒帯Eの判断基準
乾燥帯Bは、乾燥限界によって判断し、区分けすることができました。
では、その他の熱帯A、温帯C、亜寒帯D、寒帯Eはどのように区分けするのでしょうか?
最暖月の平均気温、最寒月の平均気温をつかって区分けをします。
寒帯Eの区分け
まず、最暖月の平均気温(いちばん暖かい夏の気温)によって、寒帯E、熱帯A、温帯C、亜寒帯Dを区分けします。
まず、最暖月の平均気温が、
- 10℃未満であれば、寒帯E
- 10℃以上であれば、熱帯A、温帯C、亜寒帯D
です。
寒帯Eでは、冬はとても寒くなり、夏にも気温が上がりません。夏の間だけコケが生えるくらいです。
亜寒帯Dは、冬にはとても寒くなります。でも、夏には気温がそこそこ上がって、樹木が生育することができているのです。
ですから、最も暖かい夏の月の気温をつかって、寒帯Eと、亜寒帯D+その他を分けています。
熱帯A、温帯C、亜寒帯Dを区分け
さて、次に熱帯A、温帯C、亜寒帯Dを区分けするには、どうするかです。
今度は、最寒月の平均気温(いちばん寒い冬の気温)で判断します。
- 18℃以上であれば、熱帯A
- 18℃未満、-3℃以上であれば、温帯C
- -3℃未満であれば、亜寒帯D
となります。
赤道直下の国、たとえばインドネシア。1年中ずっと暑くて、18℃以上はありますから、熱帯A。
日本はほとんどの場所で、冬には18℃未満となり、-3℃までは下がらないですから、温帯Cです。
日本のなかでも、北海道、東北の一部、高原地帯では、-3℃未満となって、亜寒帯Dに属します。
日本の沖縄よりも南にある台湾も温帯Cですね。正月に台湾を旅行したことがあるのですが、寒波が来ていて、日本の本州と変わらず、とても寒かった日がありました。
A、B、C、D、Eそれぞれのなかで気候帯を細かく分ける
上に書いたように、熱帯A、乾燥帯B、C、D、Eのなかにはいくつかの種類があります。降水量や気温によってさらに細かく分類しているのです。
主に下記のような種類があります。
A | Af、Am、Aw |
B | BS、BW |
C | Cs、Cw、Cfa、Cfb・Cfc |
D | Df、Dw |
E | ET、EF |
順番に解説していきます。
熱帯A
- 最少雨月降水量が60mm以上であれば、Af
- 最少雨月降水量が60mm未満でも年間降水量は多く、弱い乾季があると、Am
- 最少雨月降水量が60mm未満で、年間降水量も多くなく、はっきりとした乾季があると、Aw
と分類されます。
熱帯雨林気候Af
Afは熱帯雨林気候です。1年を通して気温が高く、降水量も多い。植物はよく生息し、多種類の常緑広葉樹が存在します。
東南アジアの熱帯雨林はジャングル、南アメリカ・アマゾン川流域の熱帯雨林は、セルバと呼ばれます。
熱帯モンスーン気候Am
Amは、弱い乾季がある熱帯モンスーン気候です。夏には低緯度側からのモンスーンによって雨が多く、冬には高緯度側からのモンスーンによって弱い乾季があります。
熱帯雨林気候Afの地域ほどは植物の種類は多くありません。
サバナ気候Aw
熱帯モンスーン気候よりもはっきりとした強い乾季があるのが、サバナ気候Awです。この地域では、疎林や草原が広がっています。
樹木が密集して生えることはなくて、樹木がまばらに生育する状態となります。これが疎林です。
温帯C
他の気候帯と比較して、四季の変化がはっきりとして違いを感じることができる気候です。
まず、降水量がどのタイプなのかを判断します。上記した方法と同じです。
夏季に乾燥するs型は、
(夏の最少雨月降水量 × 3) ≦ 冬の最多雨月降水量
に当てはまるもの。
冬に乾燥するw型は、
(冬の最少雨月降水量 × 10) ≦ 夏の最多雨月降水量
に当てはまるもの。
年中湿潤であるf型は、上の2つに当てはまらないもの
です。
- 夏季に乾燥するs型であれば、Cs
- 冬に乾燥するw型であれば、Cw
- どちらにも当てはまらなければ、Cf
となります。
地中海性気候Cs
ヨーロッパの地中海沿岸の気候で、夏に乾燥し、冬に湿潤となります。
他の地域としては、アメリカのカリフォルニア州、チリ、オーストラリア南西部、南アフリカ共和国などでも見られます。
温暖冬季少雨気候Cw
冬に雨が少なくて乾燥する気候です。
Awと隣合わせの場所にあります。Awよりも緯度が高くなったところがCwになっています。たとえば、東南アジアや南アジアでは、Awの気候ですが、北のほうにいくと、Cwの気候区となります。
冬季に乾燥するのは変わらないのですが、最も寒い冬の気温が変わるということです。
温暖湿潤気候Cfaと西岸海洋性気候Cfb・Cfc
1年を通して、降水がある地域は、Cfの記号となります。
そのなかでさらに、Cfa、Cfb、Cfcとわかれるのですが、1年中雨が多いのは変わらないのですが、最暖月の平均気温、つまり夏の平均気温の違いです。
最暖月の平均気温が、
- 22℃以上であれば、Cfa
- 22℃未満であればCfb、Cfc
となります。
Cfb、Cfcの違いは、
- 月の平均気温が10℃以上になる月が4ヵ月以上あると、Cfb
- 月の平均気温が10℃以上になる月が4ヵ月未満だと、Cfc
です。
日本の東京の夏はムシムシと暑くなりますよね。夏の平均気温は、22℃以上になるので、Cfaです。
ヨーロッパのイギリスやフランス、ドイツなどは西岸海洋性気候Cfbです。また、カナダ西岸やオーストラリア南西端部、ニュージーランドも西岸海洋性気候Cfbです。
これらの地域では、日本と比べると夏は冷涼で、緯度のわりには冬は温暖、気温の年較差が小さいです。降水量は、年間を通して変化が小さいです。
日本の東京では、冬の降水量と夏の降水量の差が大きいですよね。ただし、冬でもある程度の雨は降るので、Cf気候となります。
Cfcは、主に海洋で見られます。アイスランドのレイキャヴィークがそうです。
亜寒帯D
次は亜寒帯Dのなかでの分類です。亜寒帯は、寒帯ほどではないけれども寒い地域です。夏には気温が上がって、樹木が生育することができます。
温帯と同じように、降水量がどのタイプなのかを判断します。
冬に乾燥するw型は、
(冬の最少雨月降水量 × 10) ≦ 夏の最多雨月降水量
に当てはまるもの。
年中湿潤であるf型は、上のWに当てはまらないもの
です。
ただし、夏季に乾燥するs型はありません。
- 冬に乾燥するw型であれば、Dw
- Wでなくて、年中湿潤であれば、Df
となります。
亜寒帯冬季少雨気候Dw
冬に雨が少なくて乾燥するのが、亜寒帯冬季少雨気候Dwです。シベリアの東部がDw気候区になり、冬の気温は世界のなかでも最も低くなる地域です。
亜寒帯湿潤気候Df
1年をとして雨が降り、降水量の変化が少ないです。シベリアの西のほう、北アメリカのカナダやアラスカは、Df気候区です。
亜寒帯気候Dがあるのは、北半球のみです。南半球には存在しません。
乾燥帯B
乾燥帯は、BWとBTに分けられます。
上記したように、まず乾燥帯かどうかは、乾燥限界の降水量によって判断します。
年間平均温度をt、乾燥限界をrとすると、
- 夏季に乾燥するs型 r=20t
- 冬に乾燥するw型 r=20(t+14)
- 年中湿潤するf型 r=20(t+7)
そして、とある地域の降水量が、
- 乾燥限界r以上であれば、湿潤気候
- 乾燥限界r未満であれば、乾燥気候
となります。
さらに乾燥気候の中では、年間降水量が
- r/2以上r未満だと、ステップ気候BS
- r/2未満だと砂漠気候BW
となります。
乾燥限界の半分よりも、降水量が少ないと、砂漠気候になってしまうということです。
ステップ気候BS
降水量が乾燥限界よりも少なく、乾燥限界の半分以上である地域は、ステップ気候です。
ステップ気候では、サバナ気候Awと比べて、降水量が減って、乾季がさらに強くなりますから、樹木はもちろん、草も生育しにくくなります。
砂漠気候BW
乾燥限界の半分よりも少ない地域は、砂漠気候BWです。
砂漠気候では、降水量が極端に少なく、ほとんど植生が見られず、岩砂漠、礫砂漠、砂砂漠が広がる世界。
アフリカのサハラ砂漠、中東のエジプトやサウジアラビア、中国のタクラマカン砂漠、モンゴルのゴビ砂漠などですね。
寒帯E
最暖月の平均気温によって、ツンドラ気候ET、氷雪気候EFに分けられます。
最暖月の平均気温、つまりいちばん暖かい夏の月の気温を見ます。
最暖月の平均気温が
- 10℃未満~0℃以上であると、ツンドラ気候ET
- 0℃未満であると、氷雪気候EF
です。
ツンドラ気候ET
夏になっても、10℃未満~0℃以上です。この夏のあいだだけ地表付近の永久凍土がとけて、少しの草やコケ類が広がります。
シベリア、カナダ北部、グリーンランド南部などがツンドラ気候ETです。
氷雪気候EF
年中あるいは、夏の一部を除いて氷雪におおわれていて、植物は見られません。
寒帯のなかで、1年のなかで暖かくなる夏にも、月の平均気温が0℃を越えることがありません。氷に閉ざされた世界になってしまうわけです。
グリーンランド、南極地方が氷雪気候EFです。
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